牛歩村日記? Like a snail's pace?

日々平穏に暮らしていれば、自から幸せになれると言いますが‥?いろいろ雑音が‥

大雪渓~栂池Vol.1

 白馬岳の大雪渓~栂池ルートをN秋田トラベル御一行様(客6人添乗員(社長)1人)のガイドという事で山行に同行、いや引率した。7月の上旬にガイド要請のハナシがあったものの、「人数が集まらないから中止‥」と言う理由で一度はキャンセルが出た。が、実は中止ではなくて人数が少ないので僕にガイド料を払うと儲けがなくなるので、社長自ら引率しようと考えたらしい。しかしその社長、脚が痛いらしく引率出来るか自信がなくなって再度組合に問い合わせて僕のトコに話が舞い戻った‥ってワケ‥
 ま、チョッと失礼なハナシだけど、社長も利益を追求せねばならない‥ から気持ちは判る‥
 
 お陰で助役サマの御家族を迎える準備まではしたけど、週末の全てを助役サマに任せて僕は土曜の3時半起床で、薄明るくなるオリンピック道路白馬村に向け車を走らせる。八方第5駐車場に車を停めて待ち合わせの八方口バスターミナルに向う。
 
 N秋田トラベル御一行は、金曜日の夕方能代空港?から羽田着、新宿の繁華街で夕食を摂って23時過ぎにヨドバシ近くから高速バスに乗車。白馬村の八方口(唐松岳登山口)で客を少し降ろし、僕が乗車。
まずはみなさんに御挨拶‥

 猿倉への県道は草が生い茂るとこれまた狭く感じる。何台もタクシーとすれ違う。

イメージ 1村営猿倉荘着、大勢の登山者が準備をしている。僕らと同じ様な旅行会社主催のガイド?ツアーも多いけど、個人とか仲間とか学校、サークル単位で集まっているヒト達も多そうだ‥
 さて行きますかっ!って思ったら、御一行は猿倉荘にて朝食を摂るとのコト‥
なんと僕の分もあると言う。朝食&弁当(おにぎり2個)で¥1,400っ!自分で払うならまず食べないだろう‥それに、御飯の不味いコト!小学生の林間学校で飯盒で初めて炊いた様なベタベタな飯‥
さすがに米どころ秋田県民御一行も閉口している‥


朝食も終わり、登山者の集団が入れ替わり立ち代りする広場で今日の予定と、これから歩く大雪渓がいかに危険で21日に不幸にも老婆が死亡したハナシをしようと思ったが、登山相談所に詰めている組合の先輩達は居るし、小屋の関係者、同業者がウジャウジャ居るので軽くストレッチをして本日の行程を説明し歩き出す。「何時に着くのか?」と質問される‥。
 そうか、このヒト達はコース図やコース時間なんて自分で調べたり、プランを立てたりしないんだ。いや、できないんだ‥。お金を払って言うとおりに着いてゆけばそれでいい‥

イメージ 2小屋の裏の登山口に注意書きの看板がある。
『登山は“自己責任”だから気をつけろっ!』
(登山道を管理している県及び村は知らないよっ!)
とも、読み取れる。
『経験豊かなヒトのアドバイスに従う様に‥』
と言っても、
『イヌも歩けば棒に当たる』
『大雪渓を歩けば落石に当たる』
要は確立のハナシ‥
経験豊なヒトも大雪渓を歩かせる事を問題に感じながら“黙認”しているなら何の意味も無い‥
『doing nothing is doing ill』って英語の諺があるけど、そんな感じかな‥



イメージ 3猿倉荘の裏から樹林帯をハァハァ登って、工事用に作られた林道に出て広くなったトコでみんなに聞こえる様にハナシをする。
「今日登る大雪渓のコースで、3日前の21日に女性が1m大の落石に当たって死亡してます。知ってますか?」
「(旅行会社の)社長から聞いて知っている」
「ソレは僕が電話して伝えたんです。ソレと一緒にコースの変更を提案しました‥が、皆さんの回答は『大雪渓のコースのままでいい‥』という回答だったと(旅行会社の)社長から聞いています。
みなさんはリスクを承知のうえで、このコースを歩く選択をしたんです‥。良く憶えておいて下さい」
林道の先に明るく輝く白馬岳が見える。

堰堤工事用の林道から離れて山道になる。パーティには僕の母と同い年の70代の女性もいる。
疲れてしまう前にこまめに休憩を入れる様に心がける‥
イメージ 4白馬尻小屋着
雪渓の末端から涼しい風が届く。
小屋の裏の大雪渓に向う山道にはまたもこんな看板がある。
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午後2時以降は登山禁止って書いてあるけど、これは“午後の方が落石の危険が多い”のではなく、単に目撃者が少なくて救助及び通報が遅れるから‥だろう‥ 禁止と言っても強制力は無い‥と思う

 しばらく歩くと、雪渓の末端に出る。ここには林野庁の傘下にある森林?パトロールのヒトが赤いシャツを着て登山者に目を光らせている。彼らの本当の仕事は高山植物の保護の為?のパトロールなんだろうけど、どうやら大雪渓に向う登山者に注意を促している様子‥?かな?

ここでパーティのみんなにと、周りに聞こえる様に
「みんなの目の前の大雪渓に転がっている石は、両側の山から落ちてきた物です。何日も前からあったものもあれば昨日無かった石もあります。“石が在る”って言う事はソコまで落石がやって来るっていうことですから、気をつけて下さいっ!」
「でも、気をつけろっ!って言うだけではそこいらの看板と一緒だから、とにかく避けて下さいっ!」
「大きな石もあれば小さな石も在ります。前後のヒトとピッタリ着かないで、避けられる間隔を保って下さい。僕は出来るだけ早く落石を発見して教えます。」
「僕の後ろに隠れても、直前に僕も避けますからねっ!恨まないでくださいねっ」

なんてアドバイスを繰り返し言って聞かせる。周りのお客さん達も一緒に落石に気が付いたら知らせる!
ってコトを植え込ませなければならない。僕らのパーティが無事でも、近くのパーティが事故に遭う姿も見たくはない‥

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さて、確かに雪渓の上には石が多い‥。ちなみに、こんな大きさの岩が着たら避けきれるのだろうか‥
どの位のスピードで来るのか?転がって来るのか、ズルズル滑って来るのか‥

大気中の湿気が雪渓の冷気で冷やされて結露し、見通しが利かなくなって来ている。
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耳をそばだてて、落石の音を聞き逃すまいと歩く。 雪渓脇の岩棚に石仏が安置されていた‥

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ガスが晴れたりガスったり‥右の岩稜から激しい落石の音が‥腹の底に響く様な低い地響きを伴う‥
でも発生源は僕らと同じ位の高さと思われ、僕らに危険はなさそうだ‥パーティのみんなも結構な地鳴りでチョッと言葉を失っている。 結構な音の割りには下まで到達しなかった様で、雪渓の下の方から悲鳴も何も聞こえない‥。 そのうちガスが晴れてきて落石があったらしい斜面がうっすら見えた。

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そんな危険な雪渓上でも休憩をしなければならない。 家族で決死の想いで挑んでいる人たちも‥

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法律上では、コレで注意を喚起しているコトになるのだろうか‥? あとは得意の自己責任‥?

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コレが僕らのパーティ‥          赤ん坊?を背負ったままズルズル滑り降りるお父さんも‥

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大雪渓の最上部の岩室近くになると更に沢山の落石が雪渓上に散らばっている。
左手の杓子岳から崩壊して落下する石もあれば、小雪渓までの尾根から登山者が石を落としてしまう場合もある‥

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大雪渓の終点には通称「常駐隊」と呼ばれる警察の下部組織の様な救助隊が注意を喚起している
ココでは「雪渓用のアイゼンの着脱を少し登ってからして下さいっ!」って登山者をばらけさせて落石の被害を少しでも分散させようとしている?のかな‥
毎年常駐隊に上がる先輩が居たので色々聞いてみる‥

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見返すと遥か大雪渓も下方に離れている。昔はもっとヒトの列が続いていたのだけど、さすがにコレだけ死者が出ると旅行会社もこのコースを外すのだろう‥

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通称“赤岩”。浮石なのかな?コレも10年程前に動き難いように布団籠って石を詰めた籠を置く工事をやっていたけど、既に崩れていている‥

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尾根道から小雪渓を渡る。今年の残雪は例年なみか‥

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小雪渓を過ぎれば通称“お花畑”‥でも、ココも稜線からの落石の危険のあるトコ‥

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僕も久々で何度覚えても高山植物を忘れてしまい、脳の老化を更に実感する事に‥
小屋は見えているけど、70代の女性は休まないととても進めない‥
まぁ天気がいいから、いいけど、コレで雷雨かなんかでザァザァ降って来たらみんな待ってはくれないだろう‥

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なんだかんだで、何とか小屋着‥ だいぶサバ読んで午後2時って言っていたのにしっかりピッタリになってしまう‥

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小屋は南西向きのまぁまぁの和室‥ 夕陽でも拝みたかったけど曇ってしまった‥超寒い‥
秋田の人たちとお酒を飲みまくっていたら、“しらふ”ならなんとか聞き取れた言葉も酔いが回るとさっぱり聞き取れなくてワケが判らなくなって先に就寝‥

チョー寒いので、山小屋の汗だらけのヒトが毎日使うかなり汚いだろう布団をしっかり抱きしめて眠った
まぁ、無事で良かった‥

明日(7/25)もみんな頑張って歩いて下さい‥(翌日に続く?)

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大雪渓コース

イメージ 37航空写真