牛歩村日記? Like a snail's pace?

日々平穏に暮らしていれば、自から幸せになれると言いますが‥?いろいろ雑音が‥

危険予知‥『落石と、その後』

僕の業界には『危険予知』と言う活動がある。
建設業だけでなく、多くの製造業等のデスクワークでない人達の始業前には良く行われる活動だ。
警察、消防、遭難救助隊等々にもあるのだろうか?日々訓練している訳だし‥

まぁ、一種のシュミレーションみたいなモノと思っていいし‥
大雪渓を登る旅行会社主催の登山パーティについて、浅はかな考察をしてみた。
以下‥

 『落石と、その後』

【設定】某旅行会社主催。大雪渓→村営山頂宿舎(泊)→小蓮華→栂池下山
30人パーティ(40代~70代の個人客の団体)、ガイド1人、添乗員1人

大雪渓の上部で、あと20分も歩けば夏道に出るのでアイゼンを脱ぐ辺りって事にします。

①遠くでかすかに斜面が崩れる音がする『カラカラ‥』
      ↓
②岩は雪渓に入ると(雪の上なので)音もなく(シャ~って音くらいかな?)滑り落ちる。
      ↓
③滑っていた岩は弾みで立ち上がり転がり始める
      ↓
④滑っているだけなら鉛直方向に向かうのだけど、回転を始めた岩は速度を増す
      ↓
⑤雪面の凸凹や岩のバランスで、鉛直方法から大きく反れてカーブをする場合が多い(かな?)
(まるでボーリングのピンの直前でカーブする球の様に‥)
      ↓
⑥いち早く気が付いたヒトが①か②あたりで、周囲のヒトに注意(この場合「落石!」が接近中)と呼びかけ、パーティの全員が落石の落下進路を予想しながら“立ちすくんで”いる。
      ↓
⑦もしもの時には直前で避ければいい‥ってタカを括っていても目前でカーブする岩に避け切れない‥
      ↓
⑧“雪渓歩きは初めてでなく、たまたま足場の良い所に立っていた”ヒトは避ける事が出来た。
      ↓
⑨ところが、バテバテになって登っていた老人が直前に咄嗟の回避が出来ず、岩に当たってしまった。
      ↓
⑩運良く?(運が悪いからパーティの誰でもない老人に岩に当たったのだけど)頭部ではなく大腿部だったので歩けないものの、命は取り留めた‥
ガイドさんは、添乗員さんに他の人を安全な場所に移動さる様に指示し、負傷者の応急処置‥
《骨は外には飛び出していないものの骨折している模様。外傷だけオスバン希釈液で消毒‥当て木をしようにも痛がって手が付けられません‥》
o(゚Д゚ = ゚Д゚)oオロオロ‥
      ↓
⑪他の無事だったヒトは、ガイドさんに「安全な所に移動させて!」って指示されたけど、安全な場所など何処にもなく(少なくとも目の前で事故に遭った添乗員さんにはそう思えた‥)ただ、ヒトの集まっている大雪渓の上部末端にパーティを連れて行き座らせた。
      ↓
⑫アイゼンを外すヒトが犇めき合いパーティは座れる所を探して右往左往‥
登山道上に座り込むヒトも多く、下山者と登山者が入り乱れて道(踏跡って位だけど)でない所を歩く人が小さな落石を落した。
添乗員さんはチョッとの落石の音でもビクビクして、足もガクガクして来た。
他のパーティの人が添乗員さんに聞いた。
「時間かかるならお弁当食べてていいですかぁ~?」
「チョッと(負傷者を)見て来ますから、くれぐれも落石を落さない様に待ってて下さい」
とだけ言い残して事故現場に戻った。

⑬携帯電話が通じないので、救助を要請する為添乗員さんが白馬尻まで下山する事になり下山開始。
血相を変えて下山する添乗員さんに他の登山者は珍しそうに見送っている。
大雪渓の下部末端に運良く近くに居た高山植物のパトロールのヒトがおり、救助の要請をとってくれた。このガス交じりのこの天気ではヘリは来ないだろう‥
      ↓
      ↓(待機、この間もカラカラと落石が周囲で発生している)
      ↓
⑭救助隊(夏山常駐隊)が駆けつけ担架?で下山させる事になる。
ところが、救助隊の1人に次の落石が直撃‥!
(でも、なんとか歩けるのでそのまま我慢‥)
      ↓
⑮添乗員さんは付き添いで一緒に登山口まで下山‥。
電話の通じる所で会社に連絡。
被災者は無事(何度も言うけど無事でないから担ぎ降ろされているのだけど‥)救急車の待つ御殿場(県道白馬岳線の車の入れる末端)に到着。たまた大雪渓の取材に来ていた地元テレビ局が取材を開始‥
添乗員は再び隊に合流する為登山開始‥。
      ↓
⑯救助隊が被害者を曳いて下山を開始してまもなくガイドさんは無事だった参加者を連れて、夏道を小雪渓に向かう。負傷者の抜けたパーティは何事もなかった様に、登山を続ける。
      ↓
⑰しばらく黙って登っていたパーティも小雪渓のお花畑に入ると一人二人と口を開いた。
「いやぁ~。もうチョッとで俺に当たる所だった‥」
「さっきの爺さんには悪いけど、後ろに居て助かったよ‥」
「爺さん動きが鈍いんだよね‥」
「頭に当たらなくて良かったね」
「橇も乗り心地悪そうだね‥」
「下りも大雪渓でなくて良かったね‥」
「ガイドさんは避けろって言うけど、列なんだから誰かには当たるよね‥」
「あっ!また落石って下で叫んでるよ!?」
「危ないねぇ~」
「‥‥‥‥。」

「添乗員さんまた登ってくるのかなぁ~?」
「さぁ~?」
「アノ人がツアーのお金持っているんだから、来なくちゃ困るよぉ」
「僕のガイド料だって、持ってるし‥」

「ガイドさぁん!この花何ですかぁ~?」
「山頂宿舎見えて来たし、遅れたぶん急ぎましょう‥」
「早く生ビール飲みてぇ~!」
「しばらく“待たされた”から身体冷えちゃったよぉ~。走りますか!」
「夕飯は“豚の冷しゃぶ”らしいよ‥。それもおかわり自由だって!」

既に“三歩”歩いたら落石は喉元を過ぎたらしい。

こんな事が起きません様に‥